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悼む人/天童荒太

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「家族狩り」や「永遠の仔」ではとても共感する部分が多かったので、「悼む人」も同じにおいのする作品かと思いきや、全く毛色の違う作品だった。(少なくとも私には)

最初は「悼む人」である静人の悼むという行為に偽善的なものを感じて、ひどく不愉快に思った。私自身も事件や事故には敏感に反応してしまうけれど、亡くなった方へ思いをはせるのは自分自身の心のうちに留めておくものだと思っているので、静人のように行動に移して旅にまで出て表現するというのはいかがなものか…?と不快に感じた。

読んでいくにつれて静人の人間ぽい部分が見えてくるようになると、彼の行動への見方も変わっていった。亡くなった人に対してできる事なんてひとつしかない。その人を覚えておくこと。自分が死んで、自分のことを直接知っている人が一人もこの世からいなくなった時、人は二度目の死を迎える。そういう事実を読んでいる最中目のあたりにする。

さっと簡単に読み進められずに、時間をかけてじっくり読んだ。

ただ、母親の闘病の記述がとてもリアルで辛かった。自分の母親がガンで闘病生活を送っていた時から亡くなるまでを思い出してしまうから。そして、いつか自分もガンに冒されたらこんな風に死に近づいていくのかもしれない…という思いを抱いてしまってしんどかった。

母親にも孫を抱かせてあげたかったなぁ。言ったらキリがないけれど。

by honochimama | 2012-02-16 23:55  

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