悼む人/天童荒太

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「家族狩り」や「永遠の仔」ではとても共感する部分が多かったので、「悼む人」も同じにおいのする作品かと思いきや、全く毛色の違う作品だった。(少なくとも私には)

最初は「悼む人」である静人の悼むという行為に偽善的なものを感じて、ひどく不愉快に思った。私自身も事件や事故には敏感に反応してしまうけれど、亡くなった方へ思いをはせるのは自分自身の心のうちに留めておくものだと思っているので、静人のように行動に移して旅にまで出て表現するというのはいかがなものか…?と不快に感じた。

読んでいくにつれて静人の人間ぽい部分が見えてくるようになると、彼の行動への見方も変わっていった。亡くなった人に対してできる事なんてひとつしかない。その人を覚えておくこと。自分が死んで、自分のことを直接知っている人が一人もこの世からいなくなった時、人は二度目の死を迎える。そういう事実を読んでいる最中目のあたりにする。

さっと簡単に読み進められずに、時間をかけてじっくり読んだ。

ただ、母親の闘病の記述がとてもリアルで辛かった。自分の母親がガンで闘病生活を送っていた時から亡くなるまでを思い出してしまうから。そして、いつか自分もガンに冒されたらこんな風に死に近づいていくのかもしれない…という思いを抱いてしまってしんどかった。

母親にも孫を抱かせてあげたかったなぁ。言ったらキリがないけれど。
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# by honochimama | 2012-02-16 23:55  

信長協奏曲 6巻/石井あゆみ

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発売日はまだかまだかと首を長くして待っていても、本を手にとると読み終えるのはあっという間。せつないわー。

今回初めて上杉謙信が登場したけれど、後姿のみだった。もしかして「上杉謙信女性説」提唱すんの?もしくは謙信も現代人だったりして。想像は尽きないわ。

しばらく織田信長は冬の時代が続くので、信長の活躍はあまり期待できないけどね。

また7巻発売まで首を長くして待ってます。
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# by honochimama | 2012-02-11 11:43  

Box!/百田尚樹

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タイトルからは高校生ボクシングを題材にしたものだとは全然分からなかった。知っていたらスポーツ物には興味が無い私は読まなかったかもしれない。
ただただ、ストレートに面白い。夢中になっていつの間にか読み終えていたパターン。結構厚みがある本なのに、いつまでもこの人達の話を読んでいたい気分だった。

一番の見所は、ボクシングの天才だけどアホの鏑矢と秀才だけどひ弱な優紀がどんどん変わっていくところ。特に優紀は大きく変化してしまうけれど、それでも二人の仲の良さは変わらないのが、読んでいて気持ちがいい。

一つだけ残念なのは耀子があまり魅力的な女性教師に見えないこと。男性から見たら魅力的なのかな。一方マネージャーの丸野さんはとてもいいキャラクターだった。

鏑矢と優紀、鏑矢と稲村、耀子と丸野、沢木と曽我部。百田氏は人物の対比がとても上手い。
映画ではこの話の魅力は伝わらないだろうな…と思っていたら、既に映画化されてたと知りびっくり。なんでもかんでも映画化されるなぁ。

「Box!」は文章からイメージされる想像が楽しかったので、映像は見たいと思わないな、というのが本音。
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# by honochimama | 2012-02-10 23:04  

神去なあなあ日常/三浦しをん

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この人の文章、やっぱり好きだー。ゆるい感じの世界観もすごくいい。
今時の若い男の子が文句をいいながらも神去村の林業の世界に馴染んでいく様子が、とてもほほえましくて気持ちいい。主人公の勇気が感じるカルチャーショックは、読んでいるこちら側にも同じように感じられて、気がつくと勇気と同じように驚いたり笑ったりしている。

終盤の「48年ぶりの神事」は迫力満点で手に汗を握る。村のみんなは神事の詳細を知っているけれど、何も知らない勇気目線で話は進んでいくので、次々起こる出来事が面白くてしょうがない。

勇気が居候させてもらっている家主のヨキと奥さんのみきさんのバカップルっぷりや、いつも枕元に座っているイメージの妖怪みたいなおばあさん・繁ばあちゃんのキャラもとてもおいしい。

勇気には是非とも直紀さんとの恋愛を成就させてもらいたい。勇気は高校を卒業したばかりだから18歳。直紀さんは教職をとったばかりというから22歳ぐらいかな。姉さん女房だけど、神去村の人達はそんなこと全然気にしてない様子。いいねーこののどかな感じ。

過疎の田舎の村のいいところだけでなく、村社会のちょっと堅苦しく封建的な習慣も描かれているところに好感が持てるし、リアルでいい。「田舎はいいところだよー」ってだけのうそくさい話じゃつまんないもんね。

続編が読みたい話です。
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# by honochimama | 2012-02-07 22:48  

さよなら渓谷/吉田修一

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「悪人」はあまり好みではなかったけれど、なんとなくもう一度吉田修一を読んでみたくなって、この本を開いた。
やっぱり終始もやもやする。事件そのものが解決したわけじゃないから?

隣人の女が自分の息子を殺した容疑で逮捕されたというのも、実の娘を殺した畠山鈴香の事件と重なるし、大学の運動部の男子学生が一人の女子を集団レイプしたという事件も、実際にあった事件と重なる。どちらの事件も非常に不愉快な事件として深く印象に残っているだけに、本を読みながら無意識に眉根を寄せていた気がする。

吉田修一の作品に登場する人物というのは、自分の現状に不満を持っているくせにその自分を積極的に変えようと努力したり奮闘したりという潔さがない。事件に巻き込まれた不幸は自分の努力ではどうしようもないけれど、その先も不幸になる以外道はなかったんだろうか?とつい意地悪な見方をしてしまう。
でもそのあたりがもやもやの原因なんだろうな。
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# by honochimama | 2012-02-06 23:54