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クジラの彼/有川 浩

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この人は「今回の本はいまいちだったなー」なんて事がない、私にとって稀有な作家さんであります。

自衛隊員に関わる恋愛話6話を集めたこの本。「空の中」のあの二人のその後が書かれていて、なんだか安心しました。二人がどうなったのかが気になっていたので。
でも「海の底」のスピンオフも書かれていたと知って、そっちも先に読んでおけばよかったなーとちょっと後悔。

一番気に入ったのは表題にもなっている「クジラの彼」。
いまどき少女漫画でもここまでベタ甘な恋愛話はなかなかないだろうという、女の子の王子様願望を見事に表現している話。こういうのって男性が読んでどう思うんだろう。有川氏は少女趣味なところもあるけど、反面おっさんっぽい(失礼)男目線も持っている人なので、意外と男性ファンもちゃんと持っていくんだろうな。すごい人だわ。
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by honochimama | 2012-01-29 16:02  

私が語りはじめた彼は/三浦しをん

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繊細な描写が多いのに、目線は男性的。一冊がいくつかの物語で構成されていて、どれも「村川教授」という男の周囲の人間が主役になっているのに、肝心の村川教授はほとんど登場しないという、不思議な本でした。

いくつかの不幸は全部、村川教授を奪い取った女性が招いたものであるような気にさせられる最後。

美しい文章には心が洗われます。
でも嫉妬するね、この才能…。
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by honochimama | 2012-01-27 17:11  

世田谷一家殺人事件/斉藤 寅

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出版当時、色々と話題になったこの本。
書かれてある事が全部本当であるとすれば、世田谷一家殺人事件の犯人の指紋も顔写真も名前も判明していて驚くべき事だけど、それならどうして未だに犯人は逮捕されてないの?という大きな疑問にぶちあたる。

本の内容は、ジャーナリストである著者が世田谷一家殺人事件の犯人につながると思われる「クリミナル(若年外国人集団による犯罪グループ)」を追っている間に、大阪の曽根崎でおきた殺人事件や九州で起きた中国人留学生による夫婦殺害事件にも世田谷の事件との関連を見つけていき、最後はなんだか消化不良のところで終わっている。

内容の大半はクリミナルグループの話である。世田谷の一件に関わっているとされる韓国人男性のHのネタもクリミナルグループの一人から裏社会の人間を通じて仕入れているのだが、ネタを提供してくれた人間はその後死体となって海に浮いたらしい。
警察関係者や裏社会の人間が「ここだけの話…」といって著者に秘密のネタを提供している…とは著者本人の話なのに、それをここで本として公表してしまっていいの?ネタ提供者だったクリミナルグループの一人は殺されてしまったのに?と、胡散臭い点はかなりある。

それでも学ぶ事はあった。
防犯と心構えは大事だな、という点。
怨恨以外で犯罪者に目を付けられる人間や家には共通点がある。自分が犯罪に巻き込まれるとは思ってもいないというところだ。(必ずしもそうではないけど)
「家に現金や財産があると思われる生活をしていないか」「家が無防備になっていないか」「狙われやすい生活パターンではないか」思い返して確認できる事項はいくつもある。

世田谷一家殺人事件は本当に痛ましい事件でしかない。無防備な幼い子供まで残虐に殺めている犯人は一体どんな人間なんだろうか。
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by honochimama | 2012-01-24 23:44  

そのときは彼によろしく/市川拓司

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数ページ読んで、すぐにこの人の文章が好きになりました。押し付けがましくなく、センスのある文体に惚れてしまいました。

2012年(まだ1月だけど)で暫定1位です。

中学生の頃の思い出話の部分は不思議とどこか現実感がなくて、そのせいか後に続く現在の智史の周囲にいろんなことが起こっても、「それはないわ」という気分には全然なりませんでした。
イケてない男のはずの智史が、花梨を通すととても格好よく見えました。こういう表現がすごく繊細なので、著者名を見ずに読んだら女性作家の作品かと思うかもしれません。

後半は家の中で一人静かに読むことをお勧めします。
電車の中で読んでいて半泣きになりました。
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by honochimama | 2012-01-23 22:32  

3652/伊坂幸太郎

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大好きな伊坂幸太郎の10年分をまとめたエッセイ。文章が面白い人は、やはりエッセイも面白い。(とはいっても万城目学氏のエッセイに勝るものはないけれど)

小説家なので読書量が多いのは当然のことながら、漫画も結構な量を読んでいるのに驚いた。「映画はかなり見ていたけれど、子供がうまれてからは激減」というのに納得。子供が生まれるとまとまった自分の時間がなかなか取れないからねー。

一番驚いたのは、短篇エッセイの一つに「栃木リンチ殺人事件」の書評があったこと。そう、私がこの伊坂さんのエッセイ本を読む前に読み終えた本が「栃木リンチ殺人事件」だった。
なんたる偶然!運命かしら♪←何の?

電車で読んでいる最中にこの書評を目にして、思わず本が顔にくっつきそうなくらい近づけて見てしまいました。こういう偶然があるとテンションがあがります♪

これで伊坂さんの発刊されている本は全部読み終えたかな。
さみしいなー。
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by honochimama | 2012-01-20 14:42  

栃木リンチ殺人事件/黒木昭雄

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副題は「警察はなぜ動かなかったのか」。
1999年12月に栃木でおきた凄惨な事件の真相に迫った著書。私も当初、マスコミを通してしか得られない情報から、「どうして警察は再三にわたる被害者両親の捜査の請求をはねのけて事件を見過ごしてきたんだろう…?」とはなはだ疑問だった。

正和くんが殺害されるまでの経過は、文字だけの情報にも関わらず目を覆いたくなるようなむごさで、犯人達の異常さをイヤというほど感じる。
そして、正和くんの両親が10数回に亘って地元の石橋警察署に足を運んでいるのにも関わらず、全く事件性を認めようとしない警察の担当者の対応にも犯人と同じくらいの異常さを感じる。

事件発覚当初は、主犯格の少年の父親が栃木県警警部補であったことから、隠蔽工作を行おうとしていたのでは?という報道も一部されていたが、この著書を読むと、両親は当初正和くんは同僚の男性に連れまわされている可能性が高いと把握できたものの、その同僚男性は主犯の少年ではなく、警部補の息子である主犯の少年が関わっているらしいと判ってきたのは、両親が石橋警察署に何度もひどい対応をされてきた後なのである。

では石橋警察署がこれほど理解に苦しむ対応をしていたのはなぜか?
担当者であった警察署員が特別異常な人間性だったのか。それも否定できないけれど、実際にはもっと大きな背景があった。

被害者であった正和くんは日産自動車の社員であった。そして彼を連れまわしていた男(A)も同じ仕事場の社員であった。正和くんは仕事場の誰もが「温厚、真面目で信用できる」と評する程人間であるのに対し、同じ職場のAは会社でも問題ばかり起こすお荷物な存在。
日産は正和くんがAに関わる何らかのトラブルに巻き込まれたらしいと、かなり早い段階で把握していたようだ。どのくらい早い段階かというと、一度も無断欠勤したことのない正和くんが、Aに連れまわされて無断欠勤をした頃だというから、両親が石橋警察署に出向くよりも前となる。
この時日産が考えたのは、Aが起こすであろう問題が事件へと発展し、会社の不祥事として事件が明るみになる恐れである。そこで警察OBとして天下っていた日産社員(B)に、このことが事件として大事にならないように相談をもちかけた。そしてBは石橋警察署へ正和くんとAに関わる一連の出来事を事件にならないようにと働きかけたというのだ。

保身を考えた日産の対応も間違っているし、警察OBの働きかけがあったとしても石橋警察署の対応は明らかに間違っている。
一メーカーの保身と警察の怠慢が、若い真面目な青年の命を奪ってしまったのかと思うと、残念というより無念である。

これらの背景を知ってしまった正和くんのご家族の気持ちを考えるとたまらない。もし将来自分の息子が同じようなめにあってしまったら…との想像すらしたくない。

もし自分が日本のどこかに転居しなければならなくなったとしても、決して栃木県下野市は選ばない。現地在住の方には申し訳ないけれど、こんなことがまかり通ってしまう警察署が地元に存在しているなんて、安心して生活できるわけがない。
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by honochimama | 2012-01-17 09:45  

チルドレン/伊坂幸太郎

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図書館で予約をして、「まだかなー、まだかなー」と待ちこがれてやっと手元にきた本。またしてもやってしまいました。読んだことのある本でしたー。それどころか持ってる本でした(笑)
でもせっかくなので読み直してみた。

陣内というめちゃくちゃな人間は、とっても伊坂さんぽい。伊坂さんは「現実にいたらいやだなー、こんな人うっとうしいだろうな」という人間を描くのがとても上手い。しかもそんな人間が魅力的ですらある。

「チルドレン」は陣内を中心に、いくつかの短篇で構成されている。全体として陣内という一人の話でもある。よくできてる本です。


いいかげん一度読んだ本をまた借りたり買ったりってのをなくしたいなー…。
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by honochimama | 2012-01-16 15:01  

硝子のハンマー/貴志祐介

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事件発生からトリックを暴くまで、その経過を非常に緻密で丁寧な段取りで描写している。あーでもない、こーでもないと推理が右往左往するさまに同じように引っ張られて、「なるほど!」「…これじゃアカンわ」と喜んだり落胆するのは楽しいものだった。

弾道の計算式まで出しているところや、介護ロボットの設定内容や、防犯に関しての説明、どれもこれもリアルで細かい。それだけに文章に説得力があって、最後まで目が離せなかった。

防犯コンサルタントと称する榎本が怪しいのに真面目で熱心なのが魅かれる反面、主役級の弁護士・純子にはあまり魅力を感じなかった。弁護士という職業の割には、考えが浅はかで感情的なんだもん。

登場人物と同じようにあれこれ推理をしながら進んでいってたのに、あと少しで事件の真相に届きそうという後半になって、いきなり犯人目線での語り口になってしまったので、なんとなく純子と榎本が置いてけぼりになったような気分がしたのが残念。

泥棒と弁護士というありえない組み合わせだからこそ、最後には純子と榎本にはちょとしたものでいいからロマンスが生まれて欲しかったなー…と思うのは楽天的かな。
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by honochimama | 2012-01-15 22:58  

オー!ファーザー/伊坂幸太郎

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前作、前々作があまり手ごたえのない本だったので、「面白い本でありますように」と祈るような気持ち半分、伊坂さんだから面白いに違いないという期待半分で読み始めました。

読み始めてすぐに「あ~久々に伊坂さんらしくて好きな本かも♪」という予感があり、その予感は的中しました。期待通りでよかった!
でもこの作品が最近書かれた作品ではなく、数年前に新聞連載で掲載されたものだと知ってちょっと寂しくなりました。やっぱり今の伊坂さんには、かつての愉快すぎる面白い作品は難しいのだろうか?というイヤ~な予感。こちらの予感はぜひとも当たって欲しくない。

相変わらず次々と伏線らしき小ネタがあちこちに散らばっているので、あっさりとした最後では、伏線の全部をちゃんと消化されたのだろうか?と不安になり、また読み直してしまった。
伊坂作品を読むといつもこうです。(たぶん私の覚えが悪いだけなんだろうけど)

主人公の由起夫は、女子目線から見てとても格好いい。無駄に熱くない高校生なのが格好いい。喜怒哀楽の激しい高校生男子が主人公だと、オバちゃん読んでて疲れちゃうからさ。
伊坂さんの得意そうな悪人も数名出てくるのが、スパイスが効いていていい。裏社会の人間が登場すると、伊坂さんの作品はピリッと締まる気がする。裏社会の人間を描くのが得意なんだろうね。人の良さそうな作者なのに(笑)

結局振り込め詐欺の犯人はどうなったんだという疑問は残るものの、読んでいて爽快感のある楽しい本でした。


現在伊坂さんは朝日新聞の夕刊で「ガソリン生活」という連載をされていて、今の私の楽しみの一つとなっています。ただ、伊坂さんの話を少しずつ読むのって、面白いけど辛いです。一冊まとめて読んでも伏線が多くて大変なのに、毎日少しずつしか話が進まないなんて、絶対に数ヶ月後には最初の頃の話を忘れているに違いないもん。(あくまで私の場合)
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by honochimama | 2012-01-10 14:47  

ピエタ/大島真寿美

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作曲家として有名なヴィヴァルディが教師として奉職していた「ピエタ音楽院」が舞台となっている。作中ではヴィヴァルディは没後まもない頃を描いていて、彼の愛弟子達や恋人が生前のヴィヴァルディを懐かしむように交流を持ったり、過去の出来事やちょっとした謎を追っていく。

ピエタ音楽院は別名ピエタ慈善院付属音楽院ともいい、その名の通り捨てられた赤ん坊を育てる孤児院のような役割と共に、育てた子供に高度な音楽教育を施す場でもあった。
そこで育ったエミーリアとアンナ=マリーアが、かつての師であったヴィヴァルディの死を悼みながらも、ふとしたことから彼の知られざる過去に少しづつ触れていく。

物語は静かに深く流れていくように語られる。かつてのヴェネツィアはこんな現実離れした都市だったんだなーという雰囲気でもある。
亡きヴィヴァルディ以外、男性はほんの少ししか登場しない。お互いに関わりを持つようになった女性達は、濃密な関係を築いていくのが気持ちいい。なのに、既に死亡しているヴィヴァルディが物語のいつも中心に存在しているのが、独特の謎めいた雰囲気を作っていてとてもいい。

ラストで謎が明白になった時、ヴィヴァルディの存在が更に浮き出ってくる。会った事もないヴィヴァルディの生前の姿が浮かんでくるようでもある。

ドラマチックな変化が起こるような物語ではないけれど、静かで濃厚。厳粛な気持ちになる。
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by honochimama | 2012-01-09 16:37