2012年 01月 17日 ( 1 )

 

栃木リンチ殺人事件/黒木昭雄

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副題は「警察はなぜ動かなかったのか」。
1999年12月に栃木でおきた凄惨な事件の真相に迫った著書。私も当初、マスコミを通してしか得られない情報から、「どうして警察は再三にわたる被害者両親の捜査の請求をはねのけて事件を見過ごしてきたんだろう…?」とはなはだ疑問だった。

正和くんが殺害されるまでの経過は、文字だけの情報にも関わらず目を覆いたくなるようなむごさで、犯人達の異常さをイヤというほど感じる。
そして、正和くんの両親が10数回に亘って地元の石橋警察署に足を運んでいるのにも関わらず、全く事件性を認めようとしない警察の担当者の対応にも犯人と同じくらいの異常さを感じる。

事件発覚当初は、主犯格の少年の父親が栃木県警警部補であったことから、隠蔽工作を行おうとしていたのでは?という報道も一部されていたが、この著書を読むと、両親は当初正和くんは同僚の男性に連れまわされている可能性が高いと把握できたものの、その同僚男性は主犯の少年ではなく、警部補の息子である主犯の少年が関わっているらしいと判ってきたのは、両親が石橋警察署に何度もひどい対応をされてきた後なのである。

では石橋警察署がこれほど理解に苦しむ対応をしていたのはなぜか?
担当者であった警察署員が特別異常な人間性だったのか。それも否定できないけれど、実際にはもっと大きな背景があった。

被害者であった正和くんは日産自動車の社員であった。そして彼を連れまわしていた男(A)も同じ仕事場の社員であった。正和くんは仕事場の誰もが「温厚、真面目で信用できる」と評する程人間であるのに対し、同じ職場のAは会社でも問題ばかり起こすお荷物な存在。
日産は正和くんがAに関わる何らかのトラブルに巻き込まれたらしいと、かなり早い段階で把握していたようだ。どのくらい早い段階かというと、一度も無断欠勤したことのない正和くんが、Aに連れまわされて無断欠勤をした頃だというから、両親が石橋警察署に出向くよりも前となる。
この時日産が考えたのは、Aが起こすであろう問題が事件へと発展し、会社の不祥事として事件が明るみになる恐れである。そこで警察OBとして天下っていた日産社員(B)に、このことが事件として大事にならないように相談をもちかけた。そしてBは石橋警察署へ正和くんとAに関わる一連の出来事を事件にならないようにと働きかけたというのだ。

保身を考えた日産の対応も間違っているし、警察OBの働きかけがあったとしても石橋警察署の対応は明らかに間違っている。
一メーカーの保身と警察の怠慢が、若い真面目な青年の命を奪ってしまったのかと思うと、残念というより無念である。

これらの背景を知ってしまった正和くんのご家族の気持ちを考えるとたまらない。もし将来自分の息子が同じようなめにあってしまったら…との想像すらしたくない。

もし自分が日本のどこかに転居しなければならなくなったとしても、決して栃木県下野市は選ばない。現地在住の方には申し訳ないけれど、こんなことがまかり通ってしまう警察署が地元に存在しているなんて、安心して生活できるわけがない。
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by honochimama | 2012-01-17 09:45