ピエタ/大島真寿美

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作曲家として有名なヴィヴァルディが教師として奉職していた「ピエタ音楽院」が舞台となっている。作中ではヴィヴァルディは没後まもない頃を描いていて、彼の愛弟子達や恋人が生前のヴィヴァルディを懐かしむように交流を持ったり、過去の出来事やちょっとした謎を追っていく。

ピエタ音楽院は別名ピエタ慈善院付属音楽院ともいい、その名の通り捨てられた赤ん坊を育てる孤児院のような役割と共に、育てた子供に高度な音楽教育を施す場でもあった。
そこで育ったエミーリアとアンナ=マリーアが、かつての師であったヴィヴァルディの死を悼みながらも、ふとしたことから彼の知られざる過去に少しづつ触れていく。

物語は静かに深く流れていくように語られる。かつてのヴェネツィアはこんな現実離れした都市だったんだなーという雰囲気でもある。
亡きヴィヴァルディ以外、男性はほんの少ししか登場しない。お互いに関わりを持つようになった女性達は、濃密な関係を築いていくのが気持ちいい。なのに、既に死亡しているヴィヴァルディが物語のいつも中心に存在しているのが、独特の謎めいた雰囲気を作っていてとてもいい。

ラストで謎が明白になった時、ヴィヴァルディの存在が更に浮き出ってくる。会った事もないヴィヴァルディの生前の姿が浮かんでくるようでもある。

ドラマチックな変化が起こるような物語ではないけれど、静かで濃厚。厳粛な気持ちになる。
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by honochimama | 2012-01-09 16:37  

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