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対岸の彼女/角田光代

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直木三十五賞受賞作です。ママ友関係、女子高生の友人関係、嫁と姑、上司と部下、同僚。あらゆる種類の女の「関係」が凝縮されてます。
私自身は苦手なママとはつきあわないので、「対岸の彼女」の主役・小夜子(本書は主に小夜子目線で描かれています)がママ関係や公園遊びで悩んでいる姿に「めんどくさ…。そんな小さな事気にすんなよ。」と思ってしまいました。それって自分がママ友に恵まれているんでしょうね。

逆にすごく共感できた部分もたくさんありました。
「家事をどんなにがんばっても、部屋が片付けられていて、手作りの食事が食卓に並んでいる状態がゼロなのだ。」というくだりがありましたが、「うん、うんそうよねー」と主婦目線で共感。
自分以外の家族にとってはそうなんです。乾いた洗濯物が畳んでタンスに入っていて、ご飯の時間になると食事の用意が出来ている事って当たり前なんです。その当たり前の状態を作るのは主婦の努力なんですが、それを分かってくれる人ってなかなかいないかも。

この作中では小夜子が旦那に「どんなにがんばってもそれは足し算ではない。旦那にとってはかけ算だ。ゼロにいくら掛けてもゼロでしかない。」と嘆いていた。
でもこの小夜子さん、掃除の代行サービスの仕事をしているのですが(作中では研修)、掃除をしない専業主婦に「どうして家にいるのに掃除をしないんだ…」と嫌悪感をあらわにしています。それって矛盾してないか?
専業主婦なら掃除をして家を綺麗にしているのがあたりまえ、という発想は間違ってはいないかもしれないけど、小夜子の旦那さんが「奥さんがご飯を作ってくれているのが当たり前」と思っているゼロの思想と似てるような気がするんだけど。そう思う私がひねくれてるのかしら。

最初はイラっとする頼りない小夜子が段々と逞しくなっていくのは、読んでいて気持ちよかったですね。できればもっと意地悪な姑と無責任な旦那にギャフン!と言わせて欲しかったです。

by honochimama | 2011-05-14 23:01  

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